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横浜地方裁判所 平成3年(ワ)1358号 判決

原告

甲野花子

右訴訟代理人弁護士

久連山剛正

本田敏幸

梅澤幸二郎

高橋理一郎

大島正寿

池田昭

木村哲也

山下幸夫

右訴訟代理人高橋理一郎復代理人弁護士

横山裕之

被告

株式会社産業経済新聞社

右代表者代表取締役

植田新也

右訴訟代理人弁護士

加藤義樹

右訴訟復代理人弁護士

土赤弘子

主文

一  被告は、原告に対し、金一一〇万円及びこれに対する昭和六三年八月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その九を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する昭和六三年八月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告は、産経新聞紙上に、別紙(一)記載の内容の謝罪広告を、同記載の条件で一回掲載せよ。

3  被告は、別紙(二)記載の各図書館に対し、別紙(三)記載の文言及び別紙(四)記載の版下原稿により作成した付箋を各一回送付せよ。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

5  第一項につき、仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1(当事者)

(一)  原告は、昭和六二年一二月二日より、〈番地略〉において「カフェ・バー・スクエア・おんなのことおとこのこの夢見波」(以下「夢見波」という。)を経営していた者である。

(二)  被告は、日刊新聞紙の発行等を目的とする株式会社であり、産経新聞を発行している。

2(本件記事の掲載)

被告は、被告が発行する産経新聞において、別紙記事一覧表の記事1ないし同17(以下、それぞれの記事を「記事1」ないし「記事17」といい、すべての記事を指す場合に「本件記事」という。)において、原告に関する記事を掲載・頒布した。

3(名誉毀損)

(一)  本件記事の虚報性

本件記事は、①原告の自宅等から、乱数表や防衛庁の極秘情報と思われるメモ、「Aスリー」と呼ばれる暗号電波を受信できる高性能ラジオなどを多数押収した(記事1ないし同3、同5、同7、同11、同15)、②原告は朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という。)の工作員(秘密裡に情報収集活動等に従事する者)とデンマークで接触していた(記事1ないし同3、同6、同9、同11、同12、同15ないし同17)、③原告は「よど号」ハイジャック実行グループの柴田泰弘と密接な関係がある(記事1ないし同3、同5、同6、同8、同13ないし同17)、④原告が経営するスナック(夢見波)に自衛隊幹部らが毎日のように出入りしていた(記事1ないし同4)、⑤原告が北朝鮮工作員の女性名義の偽造パスポートを所持していた(記事6、同7)、⑥原告は北朝鮮に入国し工作員教育を受けていた(記事7、同9)、⑦原告は筋金入りの工作員らしく逮捕以来黙秘を続けた(記事7、同8、同11)などを主な内容とし、これらの記事の報道により、原告があたかも特殊訓練を受けた北朝鮮のスパイであり、北朝鮮の工作員あるいは「よど号」ハイジャック犯グループと接触しながら、スパイ活動を行っていたかのような印象を読者に与え、また逮捕事実は、有印私文書偽造・同行使であるのに、公正証書原本等不実記載と誤報(記事1、同10、同17)したり、渡航歴を報道し、韓国には渡航していないのに、渡航したと誤報(記事1、同6、同7)したほか、原告は北朝鮮工作員ではないのに、これを認めるかのような工作員活動を自供したと報道(記事2、同4)し、また、原告には同居していた男性が存在(記事2、同3)するなどの報道によって、原告の名誉及び信用は著しく毀損された。

(二)  実名・呼び捨て報道

更に、本件記事においては、記事1ないし同10、同12、同15、同16において、原告の氏名を実名・呼び捨てで報道しており、それにより、原告は、名誉・信用を毀損された。

4(プライバシー侵害及び肖像権侵害)

本件記事においては、原告の氏名(記事1ないし同10、同12、同15、同16)、住所(記事1ないし同7、同9ないし同14、同16、同17)、職業(記事1ないし同7、同9ないし同17)、年齢(記事1ないし同17)を掲載するとともに、原告の高校卒業後の経歴(記事1ないし同4、同6、同11)、海外渡航歴(記事1、同6、同9、同11)、店舗の賃貸借契約に関する事実(記事1)、住民のコメント(記事3)を、原告に無断で公表し、また原告の写真(記事8、同9、同11)、店舗の写真(記事3)を無断で掲載しているが、これらの報道は原告のプライバシーを著しく侵害するものであり、また記事11においては、原告の承諾なく原告の写真を撮影し、これを掲載していることから、肖像権の侵害にも当たる。

5(損害)

(一)  原告は、本件記事の掲載・頒布により、多くの友人・知人を失い、夢見波の経営を継続することができなくなったばかりか、横須賀市に住み続けることができなくなるなど、経済的・精神的に回復困難な打撃を被るとともに、原告の社会的評価は、金銭賠償のみによっては回復できないほど著しく低下した。

(二)  慰謝料

(1) 填補的慰謝料

原告の精神的苦痛を慰謝するには、あえて金銭に換算するとすれば、少なくとも金五〇〇万円を下らない。

(2) 制裁的慰謝料(懲罰的慰謝料)

現代社会が公害・薬物や名誉毀損等の新しい不法行為類型を生み出し、その制裁・予防が刑事罰や行政罰によっては必ずしも的確に果たし得ない以上、民事責任に制裁的機能を認め、その制裁を通じて、今後も同種の不法行為を行うことを抑制すべきである。

そこで、制裁的慰謝料としては、本件記事の内容の悪質性に鑑みると、金四〇〇万円が相当である。

(三)  謝罪広告の必要性

被告発行の産経新聞は、全国紙の一つであり、その影響力は絶大であるから、原告の名誉及び信用並びにプライバシー侵害の状態を回復するには、別紙(一)記載の謝罪広告を、同記載の条件で一回掲載させることが適切かつ必要である。

(四)  その他の措置の必要性

更に、本件記事は、現在においても、被告発行の産経新聞のマイクロフィルムという形で、いつでも情報に接し利用できる状態にあるから、原告に対する名誉及び信用並びにプライバシー侵害の状態はなお将来にわたり継続していることになり、その結果、本件記事が事実に反し違法なものであることを知らない第三者によって、引用その他の方法により再利用される危険が強いといえる。

したがって、原告の名誉及び信用並びにプライバシーに対する侵害を排除し、将来の侵害を予防するために、本件記事が掲載されている右マイクロフィルム所蔵の箱に、本件記事が事実に反し、原告の名誉・信用を毀損するとともにプライバシーを侵害した違法なものであることを明記した付箋を貼付し、これを閲覧、利用する者に対し、その虚偽性・違法性を告知するよう、各図書館に対し右付箋を送付の上、通知・要請させるのが適当である。

(五)  弁護士費用

原告は、原告の受けた損害を回復するために、やむなく原告訴訟代理人らに訴訟の提起、遂行を依頼し、その際、合計金一〇〇万円の報酬の支払いを約したが、これは被告の不法行為と相当因果関係にある損害である。

6 よって、原告は被告に対し、不法行為に基づく名誉回復の措置として、請求の趣旨第二項記載の謝罪広告並びに名誉権、プライバシー権に基づく妨害排除及び予防請求として、請求の趣旨第三項記載の文書及び付箋の送付を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料金九〇〇万円及び弁護士費用金一〇〇万円の合計金一〇〇〇万円並びにこれに対する最終の不法行為の日である昭和六三年八月九日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1及び2の事実は認める。

2  同3(一)のうち、本件記事が①ないし⑦の趣旨の内容を含むものであること、逮捕容疑について、公正証書原本等不実記載と報じたこと、原告が韓国に渡航したことがあると報じたこと、原告の自供及び同居男性につき報じたことは認めるが、その余は否認ないし争う。報道された逮捕罪名に誤りがあったことは事実であるが、原告は、その後追送致された公正証書原本等不実記載罪で有罪判決を受けていることから、右罪名の誤りは、原告の名誉を損なうものとはいえないし、少なくともその被害は極めて軽微であるといえるのであって、不法行為を構成するものではない。また、韓国に渡航したとの点は、原告が第三国に渡航するために韓国を経由したことがあることについては、原告自身も認めているのであるから、一時的にせよ原告が韓国に行っていることは事実であり、こうした「経由」を「渡航」と表現したことにより名誉が損なわれるものではない。

同(二)のうち、原告主張記事で原告を実名・呼び捨てで報道したことは認め、その余は否認ないし争う。本件報道当時においては、被告を含む報道機関においては、刑事事件に関しては、その被告人等を実名、呼び捨てで報道することは、慣行としてなされていたところであり、被告においては、右の慣行に従ったに過ぎず、本件記事の当事者を特定する以上に、なんら原告の社会的評価を低下せしめる等の意図も認識もなく、違法とはいえない。

3  同4のうち、本件記事に原告の住所、氏名、年齢、職業、経歴、海外渡航歴、原告の店舗の契約、住民のコメント、店舗の写真、原告の写真を掲載したことは認め、その余は争う。

4  同5は不知ないし争う。

5  同6は争う。

三  抗弁

1  名誉毀損の主張に対して

(一) 本件記事は、原告が、公正証書原本等不実記載罪等により逮捕勾留されて取調べを受け、公正証書原本等不実記載、同行使罪により略式命令を受けたこと、原告が北朝鮮の工作員と接触し、その指示により日本国内において、各種情報収集活動に従事していたこと、原告がよど号ハイジャック事件の犯人と接触していた疑いがあること、これらについての捜査当局の捜査状況及び捜査方針などを内容とするものであるが、これらの事実は、犯罪や日本国の治安、国益に関するものであって、公共の利害にかかわるものであることは、当時の国際情勢からして明白であり、本件報道が、公益を図る目的に出たものであることも明らかである。

(二) 本件記事の主要部分は、

1 原告が、有印私文書偽造・同行使罪で逮捕勾留され、その後、公正証書原本等不実記載・同行使罪の追送致を受け、公正証書原本等不実記載・同行使罪で略式命令を受けたこと、

2  原告が、北朝鮮工作員と接触し、その指示を受けて日本国内において各種の情報収集活動をしていたこと、

3  原告が、よど号ハイジャック事件の犯人と接触していた疑いがあること、

4  右1ないし3についての捜査当局の捜査状況及び捜査方針等

である。

原告が、本件記事の主要な内容であるとする前記一3(一)の①ないし⑦については、以下の通り、すべて右の1ないし4に集約されるものである。すなわち、

①の乱数表、暗号メモが押収されたという報道それ自体は、原告の名誉を毀損するものではなく、よど号ハイジャック犯人との接触を裏付ける事項にとどまるから、主要な事実とはいえず、高性能ラジオについても捜査当局がそのような見方で捜査しているということを報じたもので、原告が北朝鮮の工作員の指示の下に国内において情報収集活動をしていたことに関連するものであるから、結局、①の内容については、前記2ないし4に集約される。

②は2に、③は3に、④は2に、⑦は4に当たる。

また、⑤及び⑥は、捜査当局の情報として当局がそのような見方で捜査しているということを報道するものであるが、これらは、原告が北朝鮮の工作員の指示の下に国内で情報収集活動をしていたことに関連し、その方法・内容あるいは協力者の存在に関するものであり、その事項の報道自体は、原告の名誉を損なうものとは考えられず、その存在自体を断定しているわけでもないから、これについては、2の事実が認められれば、これに包括して評価されるものであって、主要な事実とはいえない。

(三) そして、前記1ないし4に関し、事実の摘示に関する部分は以下に述べるとおり、真実であり、また事実に対する評価・論評に関する部分は、真実に基づく公正な論評である。

(1) 1については、原告は、有印私文書偽造・同行使罪で逮捕されたのであるから、本件記事において、逮捕罪名を公正証書原本等不実記載・同行使と報道したことは誤りであったが、原告は、同罪によっても立件追送致され、この罪によって、有罪判決を受けたから、結局、原告が文書犯罪で逮捕され、略式命令を受けたことは真実であり、1に関する本件記事の主要な部分は真実であるといえる。

(2) 2に関する事実については、本件証拠上真実であると認められ、また偽造パスポートの点については誤りであることが明らかになったため、その後の報道においてこれが誤りであったことを明らかにして、原告の名誉を回復する措置を講じているところから、この点に関しては、原告の名誉は既に回復されている。

(3) 3に関する事実についても、真実であると認められ、また乱数表、暗号メモについても、原告がよど号ハイジャック犯人と接触していたことは、両名が会話しているテープの存在のほか、原告の手帳にハイジャック犯人の生年月日や本籍地の地番からとったとみられる預金口座やキャッシュカードの番号が記載されていることからも裏付けられるところ、原告から押収した手帳の記載の数字などは、一見して右犯人との関係を明らかにするものではなく、解読によって初めて判明したものであって、暗号メモとみられるから、3に関しても主要な部分は真実であると認められる。

(4) 4に関する事実については、捜査当局が原告の情報収集活動に関し、同居男性について、これを協力者として追及していたこと、あるいは原告が特殊訓練を受けていたとの疑いをもって捜査を進めていたことは、いずれも事実であり、また原告が接触していたのが北朝鮮工作員であることや、防衛庁などから収集した情報を北朝鮮に送っていた点など、捜査当局が見込んでいる重要な事項については自供せず、また供述を拒否する場面があったことも事実であるから、4についても、報道内容の主要な部分は真実であると認めることができる。

(5) また、本件記事がいずれも真実であることは、平成元年版「警察白書」に、原告が北朝鮮工作員と接触し種々の情報収集作業を行っていた旨の記載がなされていること及び昭和六三年七月二九日に外務省が原告に対して、原告が昭和五七年以来、北朝鮮工作員と認められる人物と海外において接触し、その指示により情報収集活動を行っていたことなどを理由として、一般旅券返納命令をしたことからも明らかである。

(6) 記事17の論評に係る部分は、本件及び五人の女性に対する旅券返納命令が出されたという事実を前提としているところ、これは真実であるから公正な論評である。

(四) 仮に本件記事に真実でない部分があるとしても、被告は、これを真実と信じたことにつき相当の理由がある。

被告の本件記事は、昭和六三年六月四日付け朝日新聞の記事を端緒とするものであるが、事案の性格に鑑み、被告本社社会部高橋信博外、横浜総局の井口文彦記者らを中心に取材を行った。

取材先は、公安調査庁、警視庁、警察庁、神奈川県警察本部、横浜地方検察庁の幹部や捜査担当者であり、これらの者はいずれも本件事件の内容を詳細かつ正確に知り得る立場にある者であり、情報提供についても責任ある立場にあった者であった。

右の担当者らは、被告記者との間には取材を通じ信頼関係があり、ことさらに虚偽の情報を提供する者ではなく、本件取材は、そのような立場の者、それも複数名からの情報を受けて、これを突き合わせた上、また被告に蓄積された情報とも照合し、更には原告や夢見波、原告が以前働いていた店などに出入りしていた関係者、周辺の住民等にも取材し、これらによって得られた情報とも照合し、これらの検討の上で真実と確信したところを記事にしたものであって、その真実であることを信じたことについては、相当の理由がある。

2 プライバシー侵害及び肖像権侵害の主張に対して

本件記事は、原告が有印私文書偽造・同行使及び公正証書原本等不実記載・同行使の罪を犯したとして、逮捕勾留されて取調べを受け、公正証書原本等不実記載・同行使の罪によって有罪判決を受けたこと、あわせて北朝鮮の工作員の指示を受けて、国内において各種の情報収集活動を行った者として、その解明を求められていたことを報道するものであるが、北朝鮮の工作員の指示の下で情報収集活動を行っていた点については、当時の国内外の治安・公安情勢からして、社会の重大な関心事であり、公共の利害に関わる事項である。

そして、原告がプライバシーの侵害及び肖像権の侵害に当たるとしている各事項については、いずれも報道した事実に関連し、それを特定・補充あるいは裏付けるものであり、原告の私事を興味本位に暴露したものではなく、これを報道したことによる違法性はない。

四  抗弁に対する認否及び原告の反論

1  抗弁に対す認否

いずれも否認ないし争う。

2  反論

(一) 本件記事の報道事実の公共性について

本件記事の主要部分である、原告が北朝鮮の工作員と接触し、その活動に協力した疑いがあること及びよど号ハイジャック犯との関係については、まず北朝鮮工作員と接触し活動に協力すること自体は、なんら違法な犯罪行為ではなく、またよど号ハイジャック犯との関係についても、刑法上の犯人隠避罪に該当する具体的事実もなく、いずれも原告の私生活、私行に関わる事柄であり、しかも原告は、本件報道当時、特別の社会的地位を有している者でも、その言動が社会的影響を持つものでもなかったのであるから、本件記事は、公共の利害に関する事実には当たらない。

(二) 本件記事を真実と信じるについての相当の理由について

本件記事はいずれも真実ではないが、なおかつ真実と信じるについて相当の理由もない。

本件記事の取材につき、被告は、主たる取材源として、警察庁、警視庁、公安調査庁のいわゆる公安当局と神奈川県警であるとするが、原告を逮捕し取調べをしていたのは神奈川県警であるところ、本件に関する情報は、神奈川県警から他の官庁へそのまま情報提供され、しかもそれらの公安当局は相互に情報交換をし合っていると考えられるから、結局、これらの情報源に対する取材を行っても、一致した情報しか得られないのは当然のことであって、それらの情報が一致しているからといって、それがその情報の信用性を裏付けるものとはなり得ない。そして、被告は、捜査当局に対する取材以外に、本件記事の主要な部分について、独自の取材を行っておらず、独自の裏付けはほとんどないのであるから、本件記事の主要部分について、真実と信じるにつき相当の理由があるとは到底いえない。

(三) 実名・呼び捨て報道について

刑事被告人は、有罪判決がなされるまでは無罪と推定されるという無罪推定の原則からすれば、逮捕されただけの被疑者の段階から、敬称抜きの呼び捨て報道をすれば、あたかも犯人であるかのような印象を一般読者に与え、その報道された者の社会的評価を低下させ、名誉を毀損させることは明らかである。

(四) プライバシー侵害について

公的関心の有無については、出来事とその当事者がだれであるかということは区別すべきであり、出来事に巻き込まれた当事者の名前まで公表することは、それが国民の自己統治にとって重要な場合以外は許されず、そうでない場合にこれを報道することは、社会的評価から自由でありたいという利益を侵害するものであって、プライバシー侵害に該当するというべきである。

本件報道においては、北朝鮮工作員と接触した者がいるという報道を越えて、それが誰であるかということまで公表することは、国民の自己統治にとって重要な場合とは到底いえないから、原告に対する私的事項の報道はすべてプライバシーを侵害することになる。

被告は、本件報道は、刑事事件の報道としてなされたものであると主張するが、罰金五万円の略式命令を受けるような軽微な事件について、公的関心事であると認めることはできない上、行為者の同一性まで報道する必要はまったくない。

第三  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録各記載のとおりであるから、これらの各記載を引用する。

理由

(書証の成立の真正に関する摘示は省略する。)

一  名誉毀損について

1  原告の名誉毀損の主張に対する判断

(一)  被告が、その発行する産経新聞紙上に、本件記事を掲載し、それが、①原告の自宅等から、乱数表や防衛庁の極秘情報と思われるメモ、「Aスリー」と呼ばれる暗号電波を受信できる高性能ラジオなどを多数押収したこと、②原告は北朝鮮の工作員とデンマークで接触していたこと、③原告は「よど号」ハイジャック実行グループの柴田泰弘と密接な関係があること、④原告が経営するスナック(夢見波)に自衛隊幹部らが毎日のように出入りしていたこと、⑤原告が北朝鮮工作員の女性名義の偽造パスポートを所持していたこと、⑥原告は北朝鮮に入国し工作員教育を受けていたこと、⑦原告は筋金入りの工作員らしく逮捕以来、黙秘を続けたこと(以下、それぞれ要旨①ないし⑦という。)をその内容に含み、逮捕容疑につき公正証書原本等不実記載と報じ、結果的にそれが誤報であったこと、原告が韓国に渡航したことがあると報じたこと、原告の自供及び同居男性につき報じたことについては当事者間に争いがない。

また、被告が記事1ないし同10、同12、同15、同16において、原告を実名・呼び捨てで報道したことについては当事者間に争いがない。

(二)  ところで、本件記事が原告の名誉を毀損するものであるか否かの判断をするに当たっては、本件記事の内容のみでなく、見出しの文言及び大きさ等を含めた記事全体の構成をも総合し、一般の読者が本件記事を通常の注意と読み方で読んだ場合に、本件記事全体から通常受けるであろう印象を基準として判断するのが相当である。

また、実名・呼び捨てでの報道が人の名誉を毀損するか否かについては、報道される側にとってみれば、匿名ないし仮名であることが望ましくはあるが、当事者を特定するということが報道に対する基本的な要請であるところからすれば、実名を報道する必要のある場合もあるというべきであり、その判断に当たっては、当時の社会情勢、報道の実情、報道される事実の社会的重大性、当事者の社会的地位等からして、実名での報道の必要があったか否かを検討し、更に当事者の人権にも相当の配慮を払った上で、実名による報道の必要性を総合的に判断すべきであり、その場合にすすんで呼び捨てでの報道が許されるか否かについても、そのような総合判断の上で、それが許容される範囲内であるか否かが検討されなければならない。

(三)  乙一号証、三三号証、三五号証、四〇号証の一、二、四一号証の一、二によれば、我が国においては、本件記事の発行された昭和六三年当時の社会情勢につき、北朝鮮はソウルオリンピックを機に韓国の国際的地位が向上し、南北間の経済格差が更に拡大することが「韓国革命による朝鮮の統一」という北朝鮮の基本方針の破綻にも通じかねないことに焦燥感を募らせ、ソウルオリンピックの開催阻止を企図して、日本人を装った特殊工作員を使って大韓航空機爆破事件を引き起こしたものと見られており、昭和六三年一月二六日には、大韓航空機爆破事件は、北朝鮮による組織的テロ行為であると政府として確信している旨の官房長官談話が発表されるに至り、政府として、北朝鮮からの公務員の入国は原則として認めない等の措置を取るに至ったこと、また、大韓航空機爆破事件以前においても、昭和五三年の七月から八月にかけて、富山県、福井県等で若い男女が何者かに拉致され、あるいは拉致されそうになるという事件が起こったが、いずれもこれらは北朝鮮によるものと疑われていたこと、また、昭和六三年の五月には、北朝鮮からひそかに帰国し、都内に潜伏していた「よど号」乗っ取り犯人グループの一人である柴田泰弘が逮捕されたが、柴田は、北朝鮮の意図を受け、ソウルオリンピックをテロ行為により妨害することを目的として入国したものと見られていたことが認められる。

(四)  以上の当時の社会情勢に照らし、前記一般読者の読み方により本件記事を読めば、要旨①ないし③にかかる記事1ないし同3、同5ないし同7、同8、同9、同11ないし同17、及び要旨⑤ないし⑦にかかる記事6ないし同9、同11においては、原告が北朝鮮工作員とデンマークで接触し、更に「よど号」ハイジャック犯と接触をもちながら、我が国の内外で情報収集活動を行っており、また原告自身が特殊訓練を受けた北朝鮮の工作員であるかのような印象を一般読者に与えるほか、北朝鮮が行っていると当時見られていた、テロ行為ないし工作員活動を原告も幇助しているとの印象をも読者に与えるものであると認められるから、これら記事の報道は、全体として、原告の社会的評価を低下させるものと認められ、原告の名誉を毀損するものであるというべきである。

また、工作員活動を自供したと報じる記事2、同4、同居男性に関する記事2、同3についても、記事2、同3の見出しから一般読者の読み方で判断すれば、これらの報道により、原告が北朝鮮の工作員であって、組織的な工作員活動を行っていたとの印象を与え、いずれも原告の名誉を毀損するものであると認められる。

記事10は、原告が略式起訴されたと報じ、原告が訴追されたとする内容であるから、同様に原告の社会的評価を低下させるものであると認められる。

なお、逮捕容疑の誤報の主張については、原告が逮捕されたこと、報道された逮捕容疑が誤報であったことはそれぞれ争いのないところ、乙二ないし一四号証、弁論の全趣旨によれば、原告の逮捕事実は、かつて居住していたアパートを賃借する際、他人名義の署名捺印を用いた賃貸借契約書を作成したという有印私文書偽造・同行使であることが認められるから、本件記事1、同10、同17の記載内容がこれと異なっていることは明らかである。しかしながら、原告についていえば、逮捕されたことそれ自体で原告の社会的評価の低下を招くものというべきであり、これに加えて右報道の内容からすると、右誤報それ自体によって逮捕の事実とは別個に更に原告の社会的評価が低下するものとは認め難いから、右主張は採用の限りではない。

次に、記事1ないし同4の要旨④にかかる部分の報道については、原告がカフェバー夢見波を経営していたことは当事者間に争いのないところ、同店に自衛隊幹部らが出入りしていたとしてもそれが直ちに原告の社会的評価を低下させるものではなく、しかも右報道が原告の工作員としての活動の一貫として報じられたものであることからすれば、そのことに対する原告の社会的評価の低下を論ずれば足りるのであるから、結局、要旨④に関する報道は、それ自体として原告の名誉を毀損するものとはいえない。

更に渡航先の誤報の主張についても、原告が第三国に渡航するために韓国を経由したことは当事者間に争いがないのであって、これをもって韓国に渡航したと報じることが事実に対する評価を誤ったものであるとしても、本件記事の内容からして、渡航先の誤報それ自体が原告の社会的評価の低下をもたらすものとは認められず、また渡航歴の報道についても、本件記事のもとにおいては、そのことによって原告の社会的評価の低下をもたらすものであるとは認められない。

(五)  実名・呼び捨てでの報道については、そのこと自体により、直ちに人の社会的評価が低下する性質のものではなく、当該記事の内容との関係において報道機関が実名にすべきか否かを含めて判断すべきであり、しかも、証人井口文彦の証言によれば、本件記事の報道当時においては、事件報道については、実名・呼び捨てが当時の報道慣行であったことが認められ、また本件記事(記事1ないし同10、同12、同15、同16)は有印私文書偽造・同行使の事実によって逮捕された原告に関する犯罪報道であり、その内容も、当時テロ活動を繰り返し、日本の公安秩序にも大いに関係すると思われていた北朝鮮の工作員活動に原告が関係していたというものであることからすると、本件記事において原告を実名・呼び捨てで報道したことが違法に原告の名誉・信用を害するものであるとはいえない。

2  抗弁に対する判断

(一)  人の名誉を毀損する報道であっても、それが公共の利害に関する事実であり、専ら公益を図る目的で報道された場合、摘示された事実が真実であるか、あるいはそれを真実であると信ずるについて相当の理由がある時には、その報道については違法性を欠き、不法行為は成立しないと解するのが相当である。

本件記事は、要旨①ないし⑦の内容及び前記一1(三)で認定した本件記事報道当時の社会情勢に照らせば、本件記事の内容が公共の利害に関するものであることは容易に認められ、また本件記事の内容、新聞の性格に照らせば、報道が公益を目的としたものであったことも認められる。

(二)  また、報道された記事につき、その摘示された事実が真実であることの証明の対象としては、その主要な部分において真実である旨の証明があれば足りると解すべきであり、何が記事中の主要な事実であるかは、前記同様に一般の読者の読み方を基準として判断すべきである。

この観点からすると、本件記事1ないし同17は、原告が有印私文書偽造罪等で逮捕され、それに関係して原告が北朝鮮工作員と接触し、我が国において情報収集活動をしていたと疑われていたことを内容とするものと認められるから、本件記事の主要部分は、

(a) 原告が文書犯罪にからんで逮捕・勾留され、公正証書原本等不実記載・同行使罪で略式命令を受けたこと、

(b) 原告が、北朝鮮工作員と接触していたこと、

(c) 原告が、北朝鮮工作員の指示を受けて日本国内において各種の情報収集活動をしていたこと、

(d) 原告が、よど号ハイジャック事件の犯人と接触していたこと、

(e) 原告宅から北朝鮮工作員の使う乱数表、偽造パスポートが押収されたこと、

であると認められ(以下、単に(a)ないし(e)という。)、これらの事実について真実であることの証明を要するものと考えるべきである。

(三)  まず、(a)に関する部分については、原告が有印私文書偽造・同行使罪で逮捕・勾留され、その後、公正証書原本等不実記載・同行使罪の追送致を受け、公正証書原本等不実記載・同行使罪で略式命令を受けたこと、被告が原告の逮捕事実につき、公正証書原本等不実記載罪と報じたことについては当事者間にそれぞれ争いのないところ、原告が逮捕されたこと自体は原告の社会的評価を低下させるものであることは前記一1(四)で認定したとおりであり、逮捕事実についても、原告の主張のとおり誤りではあるものの、文書犯罪であることにおいて共通し、しかも原告がその後公正証書原本等不実記載罪で略式起訴されたのは事実であるから、結局、(a)に関しての主要な部分は原告が文書犯罪に関して逮捕・勾留され、それに関して略式起訴されたということとなり、しかもこれは右のとおり真実であるから、これに関する被告の報道には違法性がないというべきである。したがって、この(a)に関する報道及び実名・呼び捨ての報道のみを名誉毀損の内容とする記事10の報道に関しては、不法行為を構成しない。

(四)  次に、本件記事内容の(b)に関する部分につき、乙三ないし五号証、一四、一五号証、二二号証、二五号証、二八号証、三八号証の一ないし四、四〇号証の一、二、四一号証の一、二によれば、以下の事実が認められる。

(1) 原告は、昭和五二年二月下旬ころ、日本を出国してイタリア、フランス等を旅行し、昭和五六年にデンマークのコペンハーゲンを訪れた際、流暢な日本語を話す四〇歳前半くらいの男性に声をかけられ、交際するようになった。その男性は、劉と名乗り、中国物産品の輸出をしている会社に勤め、本社は台湾にあり、コペンハーゲンには出張所があるなどと言っていた。

原告は、劉に対し、フランスでの連絡先を教えたところ、約一か月後、フランスに戻った原告のもとに劉から電話があり、再びコペンハーゲンで劉に会い、原告は劉に好意をもって肉体関係をもつようになり、その後も二、三週間おきくらいにコペンハーゲンで会うようになった。

原告は、昭和五六年八月ころ、劉から、電話の取次ぎや民芸品の市場調査等の仕事を手伝って欲しい旨依頼されて承諾し、劉の依頼でフランスやイギリスのホテルのパンフレットや、下着等の衣類の調達等をし、一〇万円相当を謝礼として米ドルで受け取った。

その後原告は、昭和五六年一〇月ころ、劉からの連絡でコペンハーゲンに行き、前記商品などを渡し、謝礼として米ドルで一〇万円相当を受け取ったが、その際、劉から、シンガポールに行き、シンガポール市内の写真を撮るよう指示され、撮影場所一〇か所に丸印を付した地図、ミノルタ製のカメラ一台、費用五〇万円相当の米ドルを渡された。この時、劉は、写真を撮影する場合には、その場所がどのような場所であるのか特徴がよく判るように撮るよう注意し、また、有名ホテルのパンフレットも手に入れてくるよう指示した。

原告は、劉の指示どおり、シンガポールに赴き、指示のあった一〇か所の場所を、三六枚撮りのフィルム約一〇本に撮影するとともに、約二〇軒のホテルのパンフレットを手に入れた。そして、昭和五六年一〇月ないし一一月ころ、劉の指示でコペンハーゲンに行って同人と会い、右写真及びパンフレットを渡し、謝礼として五〇万円を受け取った。

原告は、劉に誘われて、同人と共に、昭和五七年二月ころ、コペンハーゲンから東ベルリン経由でモスクワに行き、更に同年七月から昭和五八年八月ころまでの間に二回、コペンハーゲンからベオグラードへ旅行した。

原告は、昭和五九年七月に帰国したが、その約一週間前に、コペンハーゲンで劉に会い、帰国する旨を伝えたところ、劉から、日本に帰っても劉の仕事を手伝うよう言われ、ポラロイドカメラ、ワイシャツ、下着、時計、セーターなど合計二、三〇品目の日常用品等並びに、防衛白書、警察白書、国語辞典、漢和辞典等の辞書類及び東京、大阪、新潟、富山、京都、兵庫の各地図等の購入を指示され、更に日比谷公園、井ノ頭公園、代々木公園、上野公園、新宿御苑の写真撮影、銀座第一ホテル、新橋第一ホテルなど多数のホテルのパンフレットの入手等も指示された。

劉は、原告に前記指示を行う際、写真を撮るときは怪しまれないよう自然に振る舞い、そのためには写真マニアであるかのように装えばいいこと、だれかに監視されていないかを常に注意すること、本を買うときは何回かに分けて買うこと、これらの仕事については絶対に他人に言わないこと、仕事に関するメモは、用が済んだら必ず細かく破いて捨てるか焼却することなどの注意を与えた上、依頼された仕事の内容を不思議に思うかもしれないが、深く考えないでおいた方がいいなどと述べ、この仕事に対する謝礼として、原告に対し、一〇〇米ドル紙幣を一〇〇枚、合計一万ドルを渡し、その際、日本で両替する場合には偽名を使うようにとの注意を与えた。

原告は、これを承諾し、劉に対し、東京での連絡先を教えた。なお、原告は、帰国するまでの間に、劉から依頼された電話の取次ぎを合計約三〇回やり、それに対して一〇万円の報酬を一、二回受け取った。

そして、原告は、昭和五九年七月中旬に帰国し、帰国の約一週間後、右一万ドルを偽名で日本円に両替するとともに、友人宅に居住し、夜は都内のスナックで働き始め、昭和五九年一〇月初旬及び一一月末に、劉から前記の指示内容を履行するよう督促の電話を受けるまでの間に、劉から指示された物品のほぼすべてを購入し、ホテルのパンフレット二〇ないし三〇軒分及びホテルのガイドブックを入手していた。しかし、原告は、依頼された写真の撮影は半分ほどしかできていなかったため、劉からの右連絡の際、その旨を伝えると、劉から、とりあえずできた分だけでいいから持参し、それ以外の分はまた帰国後に撮影してもらえばよいが、公園の撮影だけは全部済まして欲しい旨の指示があったので、これに従った。

原告は、昭和五九年一二月下旬ころ、フランスに赴き、劉からの連絡によりコペンハーゲンで劉に会ったが、その際、購入するよう指示されていた物品等、撮影を依頼されていた写真、ホテルのパンフレット及びガイドブック等を劉に渡したところ、劉は、新たに、金箔の陶器や装飾品等約一〇点の購入を指示した。

原告は、昭和六〇年一月上旬にフランスから帰国し、前記友人宅で居住するとともに、夜はスナックで働き、従前依頼されて果たせなかった新宿、渋谷、銀座の写真を、三六枚撮りフィルム約五本を使用して撮影し、前記指示された装飾品等も購入の上、昭和六〇年四月上旬、再度フランスに赴き、劉からの指示により、コペンハーゲンにおいて劉と会い、指示されていた物品等を渡した。

原告は、劉から、原告が飲食店を経営する場合、その費用の一部を出してくれると言われていたので、コペンハーゲンで会った際、自分の店を出したい旨を伝えたところ、劉は、店をやるなら東京に近い横須賀がよい、横須賀は米軍の兵隊や自衛隊員が多く住んでいるので、飲食店を出すのに向いているなどと言ったため、原告は、横須賀ならば多少知っていたので、そこに店を出すことを決めた。

原告は、昭和六〇年五月二六日に帰国したが、横須賀に住むに当たっては、佐藤恵子の名を使うことにしていたため、劉の指示通り横須賀市内に部屋を借りた際、佐藤恵子と名乗り、喫茶店で働くとともに、簿記三級の資格を取った。原告は、同年九月中旬ないし下旬ころ、劉からの電話連絡を受けて、同年一一月二〇日ころフランスに行き、同年一二月中旬に劉とコペンハーゲンで会った。

劉は、原告に対し、知人の出身地、性格、趣味などの調査、特に金銭的困窮者、仕事を辞めたいと希望している者、海外渡航希望者の調査及びその名簿作成を依頼し、謝礼として一万米ドル支払う旨約した。原告は、劉からは以前にもメモを廃棄するようにとか、怪しまれないようにしろとか指示されており、更に人の秘密に関することの調査を依頼されたことから、ますますおかしいと思い、何か悪いことにつながるのではないかと不安に思ったが、金が欲しかったこと及び劉に好意を持っていたことなどから、これを承諾し、昭和六一年一月下旬ころ、劉からの連絡により、コペンハーゲンにおいて、劉と会い、同人から一万米ドルを受領し、日本円に換金してもらった。

原告は、同年二月上旬ころ日本に帰国し、再び横須賀に借りた部屋で生活をしながら、学校用教材を販売する会社等に勤めるとともに、夜はホステスとして働き始めた。

原告は、昭和六一年一〇月上旬ころ、劉から、電話で、前記依頼した名簿の作成が順調にいっているかどうかの問い合わせを受け、できるだけ早く持参するよう催促されたため、調査は不十分ではあったが、約二〇名の知人の氏名、住所、出身地、性格及び趣味等を記載した名簿を作成し、昭和六二年一月中旬ころ、フランスに行き、コペンハーゲンにおいて、劉に対し、前記の氏名等を記載した赤色の手帳を渡した。

原告は、その二、三日後、劉と会った際、同人から、前記名簿につき、今後は住所については番地まできちんと記載すること、生年月日についても洩れなく記載すること、家族も趣味ももっと詳細に記載することなどを注意された上前記赤色の手帳の返還を受け、引き続き前記調査をすること、今後劉と日本国内にいる同人の知人との電話の取次ぎをすることなどの指示を受け、これらの活動の報酬として一〇〇米ドル紙幣を一〇〇枚、合計一万ドルを受領した。

原告は、昭和六二年三月一日に帰国し、スナックで働き始めていたが、劉から返還を受けた前記赤色の手帳は、表紙が外れたりしていたためこれを廃棄し、新たに青色の手帳に知人の氏名、住所、生年月日、電話番号、出身地、性格、趣味、家族関係などの調査事項を記載する作業を続けた。

原告は、昭和六二年一一月初めころ、面識のない人物から、劉に対し、大楠高校二年生の浜田夕子及び森雄一の氏名、住所、電話番号等を伝言するよう頼まれ、翌日劉から電話連絡を受けた際、これを伝えた。

原告は、同年一二月二日から、夢見波の営業を始めたが、そのころ、それまで一週間か一〇日に一度の割合で連絡があった劉から、仕事が忙しいのであまり連絡できなくなるかもしれない旨の連絡があった。

原告は、昭和六三年二月下旬ころ、劉から、前記名簿をできた分だけでも持ってきて欲しいとの依頼を受けたが、夢見波が開店したばかりであるから、店の営業が軌道に乗るまで一年くらい待って欲しい旨返答し、その後も引き続き、前記青い手帳に前記調査事項の記載を続けた。

(2) 劉は、原告が横須賀に居住する旨伝えた際に、原告に対し、横須賀に住むようになったらすぐに銀行の預金口座を多数開設するとともに、キャッシュカードも作るように要請し、その際に、劉は、キャッシュカードの暗証番号として「一一二七」、「〇一二九」、「八〇六三」、「一九九五」、「〇五三一」の番号を使うように指示し、原告も誕生日である一一月六日に相当する「一一〇六」と、原告の母の誕生日に相当する「〇七一九」の暗証番号を使うことを告げ、結局合計七個の暗証番号を使うことを劉との間で取り決め、原告は、黒色の表紙の手帳にそれら番号を書き留めた。

(3) 原告は、昭和六二年九月ころ、劉から、日本にいる劉の仕事の関係者と劉との伝言の連絡方法として、西武マリオンの電話伝言システムの利用の方法を教わったが、原告自らメッセージを送って試したのみで、それ以外は利用しなかった。

(4) 原告が使用していた前記キャッシュカードの暗証番号のうち、「一一二七」については、よど号ハイジャック犯の田宮高麿の本籍地の枝番の一一二七と一致していた。

(5) 実在の国であり、北朝鮮及び韓国双方と国交があり、しかも中立的である某国の治安当局から、警視庁に対し、日本人女性とデンマークで接触している北朝鮮情報機関員について情報提供があった。

その情報によれば、北朝鮮情報機関員はキム・ユー・チョルといい、昭和一三年四月一七日平壤生まれ、身長一七〇センチメートルで、やせ型、眼鏡使用、日本語は流暢に話せ、朝鮮労働党連絡部の欧州地区担当幹部であり、同五三年一一月からデンマークの北朝鮮大使館勤務に、同五五年秋にベオグラードの北朝鮮大使館勤務となり、同五六年には、ユーゴスラビア在ザグレブ北朝鮮総領事館副領事となったというものであった。

そして、北朝鮮の朝鮮労働党連絡部の任務は、海外における情報活動、秘密工作活動を行うとともに、韓国に派遣する特殊工作員を養成訓練して、同国内で非合法な地下工作を行うことにあり、同連絡部の日本人又は韓国人に対する工作活動のうち、特に重要な任務は、韓国に合法的に渡航できる工作員を養成し、又はその工作員を指揮することにあるから、キム・ユー・チョルは、自己の支配下においた日本人女性に情報収集活動を行わせるとともに、韓国に渡航させるか又は韓国に渡航できる日本人の工作員候補者を捜し出す役割を担わせようとしていたものと見られていた。

また、某国は、我が国との間で情報交換を具体的に行っているが、推測あるいは不確かであると考えられる情報についてはその旨を明らかにした上で情報提供を行う国であり、信頼できる情報筋であるところ、キム・ユー・チョルに関する情報については、その旨の留保が付されておらず、確度の高い情報であると考えられていた。

(6) 原告は、捜査機関に対し、劉の特徴として、原告が初めて劉と会った昭和五六年六月当時で、四〇歳前半くらいで、身長約一七二センチメートル、やせ型で、眼鏡を掛けていたと述べた上、某国から提供されたキム・ユー・チョルの写真を劉に間違いないと供述した。

以上(1)ないし(6)の各事実によれば、原告の接触していた劉という人物は、キム・ユー・チョルであるものと認められ、しかもキム・ユー・チョルは、北朝鮮工作員として、その情報収集活動の一貫として原告と接触していたと認められるから、本件記事の(b)に関する部分についても、真実であると認めることができる。

(五)  しかしながら、本件記事の主要部分のうち、(c)ないし(e)については、これらを真実であると認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。

ところで、被告の報道に係る事実が真実でない場合であっても、被告がこれらの事実につき真実であると信じるについて相当な理由がある場合には、被告には過失がなく、違法性が阻却されると解すべきである。

そこで、この点を検討する。

まず、乙四七号証、証人高橋信博、同井口文彦の各証言によれば、以下の事実が認められる。

(1) 本件記事に係る一連の報道の端緒となったのは、昭和六三年六月四日付けの朝日新聞朝刊の報道であり、その内容は概ね北朝鮮工作員と接触していた日本人女性が、公正証書原本等不実記載の罪で神奈川県警に逮捕されたというものであった。

(2) 被告産経新聞の本社社会部の高橋証人は、前日の時点でほぼ同内容の情報を入手していたが、被疑者の名前等が判らないため、記事とはしていなかった。

(3) 被告においては、本件に関する情報を最初に入手したのが社会部であったところから、高橋証人を中心とする本社社会部が警察庁、警視庁、公安調査庁等の都内の各機関などの取材を担当し、横浜支局においては井口記者を担当とし、神奈川県警察本部、横浜地方検察庁の捜査担当者や幹部のほか、現地取材を行う体制をとった。

そして、本社社会部と横浜支局とは相互に情報交換をしながら、全国版記事については本社社会部が、神奈川県下において発行される神奈川県版については横浜支局において原稿を作成し、本社に送られて印刷するという方法により、本件記事を作成した。

(4) 高橋証人ら被告本社社会部スタッフは、前記六月四日付け朝日新聞の本件に関する報道により、警視庁、警察庁等公安当局に、朝日新聞に係わる報道の裏付け取材を行い、原告が、柴田と同じ乱数表を持っている旨の情報を得た。

そして、原告のスパイ活動に関して、防衛庁ないし海上自衛隊にも取材をしたものの、取材が認められず、確たる裏付け取材ができなかったことから、夢見波には防衛庁幹部の出入りがあり、当局としては、原告が、同幹部らから機密情報を引出し、スパイ活動をしているとの疑いを強めているという、断定度を下げた表現で記事とした。

更に、神奈川県警及び現地取材により、原告が同居していた男性が姿を消しているとの情報を得たため、これを記事としたが、高性能ラジオが押収されたなどの記事については、公安当局に対する取材により、北朝鮮にからむ情報を仲間同士で連絡を取り合っている疑いが強いとの情報を得て、しかも現地の取材で関係者、店に出入りしている人の話からも、原告が日曜や定休日にラジオのボリュームを大きく上げているとの事実が確認できたので、裏付けが得られたとして記事にした。

また、防衛庁幹部や海上自衛隊員らが原告の店に出入りしている点については、神奈川県警、警視庁、原告の店に出入りしている関係者等を取材してその情報を入手し、一方米軍基地の情報が洩れている旨の情報も得たが、具体的にどのような情報かについてはこの時点ではわかっていなかったので、捜査当局の疑いという内容で記事とした。

工作員名義の偽造旅券を原告が所持していたという点については、神奈川県警等に取材して情報提供を受けて記事としたが、原告が本件有印私文書偽造、同行使の被疑事実で神奈川県警に逮捕・勾留されている当時における、取調べ状況については、同県警に取材した結果、原告がスパイ活動については黙秘している旨の情報提供を受けて記事とした。

原告がデンマークでよど号ハイジャック犯の安部公博と接触していたとの点については、捜査当局から、そのような情報を入手して記事とした。

(5) 井口文彦証人及び大家俊夫、谷内誠、今井大介ら被告横浜支局スタッフは、昭和六三年六月四日付け朝日新聞朝刊によって本件を知ると、県警本部に、同記事の内容の確認及び県警が原告を逮捕した被疑事実について取材を行ったところ、県警が横須賀の女性を逮捕した、という程度の事実のみが得られたにすぎなかったが、県警幹部ら捜査当局者、夢見波の周辺等での取材活動等により、原告が夢見波の店舗を借りる際に実在する無関係の男性の名前を使って賃貸借契約を締結した疑いがあること、公正証書原本等不実記載の疑いがあること、夢見波には防衛庁幹部らが出入りしていたこと等の情報を得たので、これを被告本社社会部に送り、その結果、記事1に掲載された。

そして、県警からの取材により、原告が捜査中に北朝鮮の工作員と接触したことを認めた上で、その指示の下で各種の情報の収集活動を行っていた疑いがある旨の情報を得、また、県警の捜査員から、原告に対する家宅捜索の結果、他人の写真を貼ったようなものが出てきたが、どうもそれがパスポートのようである旨の情報提供を得たため、これに他の取材源からの情報収集も行った結果、偽造旅券についての情報として、これを被告本社に送り、本社はこれに基づき記事を作成した。

Aスリーなる高性能ラジオを原告が所持していた旨の記事については、Aスリーという固有名詞については東京の本社において入手したが、横浜支局でも県警に対する取材により、原告がラジオで北朝鮮関連の情報をキャッチしていた旨の情報を得ていた。

原告の勾留中の取調べ状況についても、スパイ活動について黙秘しているということについて、原告が唇をかみしめ、血がにじみでたこともあった等の表現での情報を得ていた。

また、原告が北朝鮮に入国し、工作員としての特殊訓練を受けていたとの疑いについては、県警に対する取材により、県警がその旨の疑いを抱き、そのような捜査をしているとの情報を得ていた。

(6) なお、偽造パスポートを原告が所持していた旨の報道については、後に被告において誤りを認め、記事9においてその旨訂正した。

(7) 本件に関して、捜査段階においては、神奈川県警等捜査当局からは公式発表、記者会見等は一度もなかった。

以上の(1)ないし(7)に認定した事実及び前記(四)の事実によれば、被告が(c)ないし(e)の事実を報道するについて、被告本社社会部及び横浜支局において、警視庁等公安当局、神奈川県警、原告の周辺等を一応取材したものと認められるが、(c)ないし(e)の事実について、神奈川県警等からの公式の発表がない以上、たとえ、被告社会部等の記者が、捜査当局から直接その旨の情報提供を受けたとしても、被告において、これらの事実につき、被告独自の裏付け調査を行った上で記事を作成すべきであり、本件においては、右認定に係る被告の取材の全経過を参酌しても、被告が右裏付け調査を十分に行ったとは認め難いから、被告において、これらの事実を真実であると信じるにつき相当の理由があるとは認められないというべきである。なお、原告とよど号ハイジャック犯との関係についてみても、前記(四)において認定したとおり、劉が指示したキャッシュカードの暗証番号によれば、よど号ハイジャック犯と原告との間に、なんらかの関係があることがうかがわれはするが、これだけでは(d)の事実が真実であると信ずるについて相当の理由があると認めることはできないといわざるを得ない。

(六)  記事17については、前記認定によれば、原告が北朝鮮工作員と接触していたことに関する部分については真実であると認められるが、よど号犯人との関係については真実であると認められず、また真実と信じたことにつき相当の理由があるとも認められないから、この点については名誉毀損が成立するが、その他の部分については、公正な論評の法理によるまでもなく、原告の名誉を毀損するような事実の摘示があるとまでは認められない。

二  プライバシー侵害及び肖像権侵害について

1  原告は、本件記事において、その氏名、住所、職業、年齢、経歴、渡航歴、店舗の契約に関する事実、住民のコメントを原告に無断で掲載したこと、原告の写真、店舗の写真等を無断で掲載したことが、プライバシーの侵害に当たると主張するので、以下この点について判断する。

他人に知られたくない私的な事柄をみだりに公表されない利益については、いわゆるプライバシーの権利として一定の法的保護が与えられるべきであり、このような個人のプライバシーに関する事柄を報道するについては、プライバシー保護の必要性と言論の自由の保護との比較衡量により、その侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えているか否かを判断してこれを決すべきであるが、その報道が専ら公益を図る目的でされたときは、その事実が報道記事の内容等を理解するのに必要な限度でその報道は許容されると解すべきであり、その判断に当たっては、そのプライバシーに関する報道が、公共の利害に関するものであるかどうか、その表現行為が、方法において不当なものがないかどうかを総合考慮して判断すべきである。

そして、この観点からすると、本件記事は、原告が北朝鮮の工作員と接触し、情報収集活動を行っていたことをその主な内容とするものであり、これは前記認定の本件記事が報道された当時の社会情勢に照らせば、公共の利害に関するものであると認められ、また表現行為としては特段不当なものとは認められず、原告がプライバシーに該当すると主張する、氏名、住所、職業、年齢、経歴、渡航歴、店舗の契約に関する事実、住民のコメント、原告の写真、店舗の写真等は、本件記事の内容、背景等を理解するのに必要と認められるから、これらのプライバシーに関する情報を報道したことについては、違法性を欠くというべきである。

2  報道写真の撮影及びその公表は、被写体となった者の肖像権を侵害するものであるから、これを行うには、原則としてその承諾を得ることが必要であるが、その撮影及びその公表が犯罪捜査の報道等公共の利害に関するもので、かつ公共の利益を図る目的のためにされた場合であって、撮影及び公表の方法が右目的を達するのに相当であれば、違法性は阻却されると解すべきである。

ところで、被告が記事11において、釈放される原告が、顔を隠しているところを撮影した写真(以下「本件写真」という。)を掲載したことは当事者間に争いのないところ、本件写真の撮影を原告が承諾していたとは到底認められず、また本件写真は、その内容からするとだれでもその撮影及び掲載を望むようなものであるとは考えられないばかりか、記事の内容も、原告が北朝鮮の工作員であることを色濃く窺わせるものであることからすれば、そのような記事への本件写真の掲載は、右観点からしても原告の肖像権を侵害するものであり、その違法性は阻却されないというべきである。

三  被告の責任について

被告発行の本件記事は、前記一、二に認定の限度で、原告の名誉を毀損し、また肖像権を侵害するものである。

そして、それら記事の報道は、被告の従業員により、被告の事業の執行としてなされたことは明らかであるから、被告は使用者として、原告に対する不法行為責任を負うというべきである。

四  損害について

原告の、被告による名誉毀損及び肖像権の侵害による精神的苦痛を慰謝するに足りる賠償額は、本件に現れた全事情の下においては、金一〇〇万円をもってするのが相当である。

また、原告の主張する、制裁的慰謝料については、現行の法律制度の下で認められるものであるかについては疑問があるのみならず、原告の主張を前提にしても、本件に現れた事情の下においては、そもそもそれを認めるべき余地はないというべきであるから採用できない。

原告が、本件訴訟を、訴訟代理人らに対して委任し、訴訟の提起、遂行をし、これに対して報酬の支払いを約したことは弁論の全趣旨より明らかであるが、このうち、被告の不法行為と相当因果関係にあるものと認めるものは、本件の事案の性質及び審理経過、認容されるべき損害賠償額等の諸般の事情に照らして考えれば、金一〇万円が相当であると認められる。

五  名誉回復措置、妨害排除、予防請求について

原告の求める謝罪広告の掲載については、本件事案の内容、原告の社会的評価の低下の程度、認容すべき損害賠償額等を総合的に判断すると、本件においては、金銭的な賠償に加えて、謝罪広告の掲載の必要があるとまでは認めることはできない。

また、図書館所蔵のマイクロフィルム化された記事への対策として、それらの図書館への付箋の送付を求める部分については、当該図書館に対して付箋を送付したとしても、その付箋の貼付を実現するについては、各図書館の任意の履行に期待するほかはなく、送付を受けた各図書館においてどのような対応を取るのかが不確定である以上、このような方法はその実効性に疑問があるというべきであり、妨害排除あるいは予防として、適当、必要な措置であるとはいえず、将来にわたり生ずるであろう不利益については、金銭賠償の額の決定に当たり斟酌することをもって足りるものというべきである。

六  結論

以上によれば、原告の本訴請求は、不法行為(名誉毀損及び肖像権の侵害)に基づく慰謝料及び弁護士費用の合計金一一〇万円並びにこれに対する不法行為の日の後である昭和六三年八月九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合の遅延損害金の支払いを求める限度において理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官秋武憲一 裁判官今井弘晃 裁判長裁判官尾方滋は転補のため署名捺印できない。裁判官秋武憲一)

別紙記事一ないし一七〈省略〉

別紙(一) 謝罪広告

別紙(二) 図書館目録

別紙(三) お願い文書(付箋貼付)

別紙(四) 付箋〈省略〉

別紙

記事一覧表

記事

発行日

種 別

見  出  し

1

6月4日

夕 刊

柴田と同じ乱数表持つ女性逮捕/横須賀でスナック経営者/防衛情報収集か/神奈川県警

2

6月5日

朝 刊

米軍情報も流す/横須賀の乱数表の女/「北」の工作員と認める/自宅に不審な男性が出入り

3

6月5日

朝 刊

県 版

甲野花子逮捕事件/県警“県内組織”解明へ/姿消した同棲の男/甲野素人っぽく客に人気/周囲の店も不思議がるほど多い防衛庁関係の客

4

6月6日

朝 刊

「北」スパイ甲野/3年前からスナックで協力者工作/自衛隊幹部ら毎日出入り

5

6月6目

夕 刊

万景峰号/北朝鮮貨客船で密入国/柴田/60年4月3日元山から横浜港へ直行/大物工作員が同行か/押収の生活行動メモで判明

6

6月7日

夕 刊

甲野、北朝鮮諜報組織の/工作員名義の偽造旅券所持/“柴田入国”の指令受ける?

7

6月10日

夕 刊

横須賀のバーママ、甲野/「北」で特殊訓練?

8

6月12日

朝 刊

三者三様黙秘崩さず/甲野唇かみしめ…

9

6月14日

夕 刊

甲野、欧州に長期滞在/東側にも入国/「北」工作員と接触か

10

6月15日

夕 刊

甲野(横須賀カフェバー経営者)略式起訴、釈放

11

6月16日

朝 刊

県 版

本件「北」の工作員は、“灰色決着”/横須賀市のカフェバー女性経営者の略式起訴、釈放/20日間、沈黙守る/「逮捕は見切り発車」の声も

12

6月17日

夕 刊

「北」との接触否定/女性経営者が記者会見

13

6月25日

朝 刊

田宮も帰国していた/「よど号」りーダー/都内アパートに指紋/柴田逮捕後、姿消す

14

6月25日

夕 刊

「よど号」ハイジャック犯/続々と帰国?/田中義三、安部公博が関西に/目撃者相次ぐ/大阪、愛知、福岡

15

8月6日

夕 刊

女性5人、北朝鮮工作員と接触/外務省、旅券返納を命令/「公安を害する行動」

16

8月7日

朝 刊

一本釣りで工作員に/旅券返納命令の女性、5人/大物の指示で暗躍

17

8月9日

朝 刊

(主張)五女性旅券返納命令の陰に

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
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